各種検査

検査について

透析患者様の検査は主に次のような目的で定期的に実施しております
・ 充分な透析が行われているか、体の水分量が適切であるかを評価する
・ 様々な合併症(貧血・動脈硬化・骨障害など)や疾病を早期に発見する
・ 治療効果を判定する
また、病態の変化に応じて追加で検査を行い診断や治療に役立てています
博友会では主に臨床検査技師(超音波検査士・血管診療技師・下肢救済足病学会認定師の
認定資格保有者を含む)がこれらの検査を担当しています

検体検査月に2回の定期血液検査を実施

透析の適正や薬剤効果の確認、新たな合併症の発見、栄養・健康状態の管理など様々な指標として不可欠な検査です。博友会における定期検査項目と基準値は以下を参照下さい。
検査項目 略称 透析前基準値 概要
尿素窒素 BUN ~100 mg/dl 蛋白質代謝産物.食事量を反映
クレアチニン Cre ~15 mg/dl 筋肉代謝産物で個人差あり.腎機能や透析効率の指標
ナトリウム Na 平均137mEq/l 食事の塩分や水分で体重増加と関係あり
カリウム K 3.5~5.5 mEq/l 食事の影響大.高値で重大な不整脈の場合あり
補正カルシウム cCa 8.4~10.0 mg/dl 腎機能障害で低Ca高P.Pは食事の影響大
骨が弱くなる(二次性副甲状腺機能亢進症)動脈硬化
リン P 3.5~6.0 mg/dl
副甲状腺ホルモン int-PTH 60~240 pg/ml 低Ca高Pで上昇(二次性副甲状腺機能亢進症)
総蛋白 TP 6.6~6.8 g/dl 栄養状態をみる
アルブミン Alb 3.6~4.2 g/dl 栄養状態をみる
血糖 BS 70~109 mg/dl 食事により上昇.糖尿病の指標
グリコアルブミン GA 20%未満 主に2週間前からの血糖値を反映
赤血球 RBC 380~500万個/m㎥ 酸素の運搬.貧血をみる
ヘモグロビン Hb 10~11 g/dl 血色素量.貧血をみる
ヘマクリット Ht 30~33% 血中の赤血球の割合.貧血をみる
Fe 50~200μ g/dℓ 貧血をみる.鉄欠乏の指標.
フェリチン fer 50~100 ng/mℓ 鉄の貯蔵.貧血をみる.鉄欠乏の指標
鉄飽和率 TSAT 20%以上 貧血をみる.鉄欠乏の指標
必要時は検便(消化管(大腸)出血を調べる)や検尿(尿中の蛋白や糖等を調べる)、各種検体の培養(細菌を調べる)や細胞診・病理(悪性細胞の有無・組織を調べる)等の検査も実施します。

心電図検査定期的に実施(検査頻度は状態により変わります)

透析患者様は心臓の病気がある方が多く、また、心臓に負担がかかりやすい状況(溢水やカリウム値の異常など)のため、心不全や不整脈などを合併しやすくなります。この検査では不整脈、狭心症(心筋の酸素不足)、心筋梗塞(心筋の壊死)、心肥大などがわかります。基本的に安静状態で記録しますので、検査時に心電図に異常が現れない場合もあります。しかし、症状が現れた時の心電図と比較するためにも安静時の心電図検査は重要です。

また、安静時では見つかりにくい異常を調べるため、ホルター心電図(24時間心電図を記録する)や負荷心電図(心臓に負荷をかけて変化をみる)を行う場合があります。

胸部レントゲン検査月に1回定期的に実施

体の適切な水分バランスを保つための体重の目安;DW(ドライウエイト)を設定するため、CTR(心胸比)*を測定します。また、肺に水が溜まっていないか、肺に病気がないか等を確認します。
レントゲン検査は放射線技師が担当します。

*CTR=(心臓の幅/胸郭の幅)×100(%)

CT 検査

CTは身体の断面を撮影するX線を使った検査です。短時間で検査ができて、高性能高画質の画像が得られます。様々な病変を発見することができます。
CT検査は放射線技師が担当します。

超音波検査(エコー)

【心臓】・・・必要に応じて年に1回以上実施

透析患者様は心臓の病気が多いといわれています。心臓の大きさ、壁の厚さ・動き、血液ポンプとしての機能、弁の動き・逆流、心のう水(心臓の周りの水)などを評価します。水分の過剰で心臓に負担がかかっていないかなど、適正DWの評価にも重要な検査です。

【腹部】・・・必要に応じて年に1回以上実施

透析患者様は腎癌の発生率が高いことが報告されています。腎癌のスクリーニングを含め、上腹部(肝臓、胆嚢、胆管、膵臓、脾臓、腎臓)を観察します。

【副甲状腺】

透析患者様の重要な合併症『二次性副甲状腺機能亢進症』の疑いがある場合に実施しています。この合併症は重症化すると骨やミネラル代謝の異常を起こします。血液中のリン、カルシウム値のコントロールや治療薬により副甲状腺ホルモン(int-PTH) の分泌を調整することが必要です。超音波検査では副甲状腺の大きさ等を観察します。

PAD(Peripheral Arterial Disease)末梢動脈疾患の検査

PADとは、足などの血管に動脈硬化が起こり、動脈が狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなる病気です。進行すると酸素不足や栄養障害により痛みが出現し足が壊死してしまうこともあります。喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常、腎不全状態でPADになる危険性が高くなります。PADがあると心臓や脳の病気も合併しやすいといわれています。
博友会では診断アルゴリズムを作成し、各検査を実施しています。足病変の状態を把握したうえで、必要時には早期発見・早期治療のため連携病院へご紹介しています。これらの検査結果はクリニック内で行う日常のフットケアにも役立てられます。また、PAD治療の一つであるLDL吸着療法を行う場合もあります。

【ABI(Ankle Brachial Pressure Index, 足首/上腕血圧比)】 【TBI(Toe Brachial Pressure Index, 足趾/上腕血圧比)】

ABIはPADのスクリーニング検査です。少なくとも年に1回実施しています。両足首とシャントと反対側の腕の血圧を同時に測定し、その比率で表します。TBIは足の第1趾(親指)の血圧を測定するもので、動脈石灰化が強い透析患者様のPAD評価として有効です。

SPP(皮膚灌流圧)

足の末梢毛細血管など、細い血管の血流を評価します。潰瘍ができてしまった場合での評価や治療の検討・治療効果を把握する際にも重要です。

下肢動脈超音波(エコー)

足の動脈の形態(狭窄や石灰化の度合い・側副路の確認)や血流を評価します。また、おおよその病変位置を確認します。

シャント(Vascular Access(VA))の検査

博友会では、効率の良い透析を行えるよう透析スタッフによる日常的な管理(診察所見(触診・聴診・視診)、STS(シャントトラブルスコアリング)チェック、透析効率・再循環測定等)を実施しています。また、シャント超音波(エコー)検査や造影レントゲン検査による評価も重要です。

シャント超音波(エコー)

シャントの状態によりその頻度は様々ですが、シャント血管の機能評価(血流量の測定)や、形態評価(血管走行や性状、狭窄部血管径等の観察)のために実施しています。結果によりシャント不全と診断され、治療が必要になる場合があります。治療後もしっかりとフォローができる体制ができています。
またシャント(VA)外来においては、医師による診察の上、超音波検査により治療効果の評価や、必要な場合の定期フォローアップ検査を実施しており、受診される患者様の現在のシャント情報を提供しています。治療の時期を計画するうえでも有効です。

シャント造影(レントゲン)

造影剤を用いて行います。超音波検査では把握しきれない部位や、シャント全体を確認するために有効な検査です。

CPX(Cardiopulmonary Exercise Test) 心肺運動負荷試験

CPXは心臓リハビリテーション(運動療法)を行う上で必要不可欠な検査です。
徐々に負荷がかかるエルゴメーター(自転車こぎ)運動を行い、運動中の血圧・心電図・呼気ガス(呼吸中の酸素・二酸化炭素濃度)を計測します。
安全かつ効率よく行える運動強度を決定し、運動メニューを作るための指標になります。